空腹で眠れない夜に迷うのは食べるか我慢するかです。食べていい食品のリストを見てもいま食べるべきかどうかは決まりません。この記事は、その判断を就寝までの残り時間と空腹の強さで分ける方法をまとめたものです。
先に結論です。この5行で足ります。
- 就寝まで3時間以上あるなら、軽めの食事にして構いません
- 1〜3時間なら、おにぎり半分、無糖ヨーグルト1個、バナナ1本くらいの軽食にとどめます
- 1時間未満か、すでに布団の中なら、温かい牛乳や具の少ない汁物をひと口ふた口で足ります
- 量は「空腹が気にならなくなる最小限」で、満腹まで食べません
- 揚げもの、大盛り、強い辛味、寝酒は、この時間帯では割に合いません
先に確認すること
以下に当てはまる場合は、この記事の一般的な目安より自分の治療方針のほうが優先します。
- インスリンや、血糖が下がりうる薬を使っている
- 冷や汗、手の震え、動悸、めまい、目のかすみ、頭が働かない感じをともなう強い空腹がある
- 低血糖のときの対応を医師から個別に指示されている
空腹感と低血糖は同じものではありません。低血糖はおもにインスリンや一部の糖尿病治療薬を使っている人で問題になるもので、そうでない人ではまれです。ただし上のような症状が同時に出ている場合は、食品の選び方の話ではなくなります。指示された対応があるならそれに従ってください。米国糖尿病学会は、低血糖のときは吸収の速い糖質を15g取り、15分後に測り直す方法を案内しています。
意識がはっきりしない、けいれんがある、自分で飲み込めない、といった状態は緊急です。ためらわずに救急へ連絡してください。
食べるかどうかは残り時間で決める
同じ空腹でも21時と24時では取るべき行動が変わります。まず時間で分けます。
| 就寝までの残り | 目安 | 例 |
|---|---|---|
| 3時間以上 | 普通の食事で構いません。脂の多いものは控えめに | 主菜と汁物、ごはんは少なめ |
| 1〜3時間 | 150kcal前後の軽食にとどめます | おにぎり半分、無糖ヨーグルト1個、バナナ1本 |
| 1時間未満 | 液体か、ひと口ふた口 | 温かい牛乳100ml、具の少ないみそ汁、白湯 |
| すでに布団の中 | 起き上がるかどうかを先に決めます | 起きるなら明かりは最小限にして、台所で完結させます |
この3時間と1時間という区切りは、この記事が使いやすさのために置いた目安です。医学的な境界として決まっているものではありません。実際には、空腹の強さ、夕食の量、逆流や胃の不快感が出やすいかどうかで前後します。同じ「1時間未満」でも、少し気になる程度と痛みに近い空腹とでは選ぶ答えが変わります。
布団の中で迷い続けるのがいちばん時間を使います。10分考えても収まらないなら、起きて少し食べるほうが早く終わります。起きる場合は明かりを最小限にして、動線を短くします。スマートフォンを持って台所へ行くとそこから戻れなくなります。
なぜ空腹だと眠りにくいのか
強い空腹は注意を引きます。布団に入っても体の内側から続く信号に意識が向いて、考えごとと同じように寝つきを邪魔します。眠りに落ちる直前は外からの刺激も内からの刺激も引いていく必要があるため、空腹はその邪魔になりやすい部類です。
空腹の理由もひとつではありません。夕食の量が足りなかった、夕食が早すぎた、運動した、飲酒した、気疲れがたまっている、薬の影響がある、といった要因が重なります。血糖の上下だけで説明できるものではないので、原因探しに時間をかけるより今夜どうするかを決めるほうが先です。
やっかいなのは寝不足そのものが翌日の空腹を強めることです。健康な若い男性12人を対象に、就床4時間の2日間と就床10時間の2日間を比べた研究では、睡眠を削った側で満腹に関わるレプチンが18%下がり、食欲に関わるグレリンが28%上がり、空腹感が24%、食欲が23%増えました。特に炭水化物の多い高カロリー食品への欲求が33〜45%増えています。参加者12人の実験室での研究で、一晩眠れなかった場合を測ったものではありません。それでも、睡眠が削れると食欲が動く向きがあることは示しています。
食べる場合の量の目安
夜の食事について、少量なら悪影響が一貫していないことを示したレビューがあります。夜間に大きな食事をまとめて取る食べ方では良くない結果が示されている一方、150kcal程度の少量で栄養密度の高いものであれば悪い結果は一貫していない、という整理です。したがって主役は食品の種類ではなく量になります。
この150kcalは研究で扱われてきた量であって、誰にでも当てはまる上限ではありません。カロリーを数えることが負担になる人は、量の感覚をつかむための目安としてだけ使ってください。摂食に関する悩みを抱えている場合や、食事の内容を医師や管理栄養士から指示されている場合は、そちらを優先します。
150kcalがどのくらいかを身近な食品で置いておきます。おおよその値です。
| 食品 | 量 | おおよそのエネルギー |
|---|---|---|
| ごはん | 50g(おにぎり半分) | 約80kcal |
| 無糖ヨーグルト | 100g | 約60kcal |
| 牛乳 | 100ml(コップ半分) | 約60kcal |
| バナナ | 1本 | 約90kcal |
| アーモンド | 10粒 | 約70kcal |
| みそ汁 | 具の少ないもの1杯 | 約35kcal |
乳製品を避けている場合は、無調整の豆乳や、具の少ないスープが同じ役割をします。ナッツを避けている場合は、クラッカー数枚やバナナで置き換えられます。組み合わせる場合も、合計で150kcal前後、多くても200kcalまでに収めます。空腹が消えるまで食べるのではなく、気にならなくなったところで止めるのが目安です。
何を選ぶか
量を決めたら、次は消化の負担で選びます。目安は3つです。
- 温かいもの。温度そのものより急いで食べにくくなるのが利点です
- 水分が多いもの。少ない量でも満たされやすくなります
- 脂質が少ないもの。脂の多い食事は胃にとどまる時間が長くなります
避けたいものも、この時間帯に限れば単純です。揚げものと脂の多い肉は消化に時間がかかります。大盛りは横になったときにつらくなります。強い辛味や酸味は、胸やけが出やすい人では症状のきっかけになることがあります。逆に、それで困ったことがない人が一律に避ける必要はありません。寝酒は寝つきを早めても夜半以降の睡眠を浅くしやすいことが指摘されています。
夜に飲むものにカフェインが入っていないかも一度確認しておくと安全です。止める時刻の考え方は コーヒーは何時まで飲んでいいか にまとめてあります。
眠りに良いとされる食品はどうか
くるみやタルトチェリーを勧める記事をよく見かけます。この点は正直に書いておきます。
食事と睡眠の質に関するレビューは、牛乳、脂の多い魚、タルトチェリージュース、キウイについて、睡眠の質を後押しする可能性を示す研究があるとまとめています。働き方は食品ごとに違い、メラトニンで一括りにできるものでもありません。著者らは、これらは予備的な結果であり、確認にはさらに研究が必要だと述べています。今夜それを食べれば眠れる、と読める段階ではありません。
ですから、選び方の順番は「量」「消化のしやすさ」「手元にあるか」で構いません。たまたま冷蔵庫に牛乳やキウイがあるなら、それを選んで差し支えありません。わざわざ買いに出るほどの根拠ではない、という位置づけです。
食べないでしのぐ場合
軽い空腹なら、食べずに済ませたほうが後片付けも含めて早く終わります。ここに挙げるのは空腹を消す方法ではなく、食べに行く流れを一度切るための手です。
- 常温の水か白湯を1杯だけ飲みます。喉の渇きを空腹と取り違えていることがあります。何杯も飲むと夜中に起きる回数が増えるので、1杯で止めます
- 歯を磨きます。今日の食事を終えた区切りとして使えます
- 部屋は暗いままにします。明かりをつけると寝つきが遠のきます
- 退屈や気疲れが理由になっていないかを一度だけ確認します。夕食から4時間も経っていないなら、体の空腹ではない可能性があります
これで15分から20分たっても空腹が引かず、眠れないままなら、我慢を続けずに上の表へ戻ります。
明日から繰り返さないために
同じ夜が続いているなら、直すのは夜中ではなく夕方です。
夕食の時刻が遅くならざるを得ない日は、夕方のうちにおにぎりやヨーグルトなど一部を先に食べておき、帰宅後は汁物と主菜だけにします。夜遅くにまとめて食べるより寝る時点の胃の負担が軽くなります。
夕食の中身も効きます。主食だけで済ませた日は数時間で空腹が戻りやすいので、たんぱく質と食物繊維を足しておきます。同じエネルギーでも、持ちが変わります。
食事と酒を3時間前までに終える形は、就寝前の枠として広く知られています。この枠の全体像と守れない日の調整は 10-3-2-1-0睡眠法とは にあります。夜全体をどう組み立てるかは 寝る前の夜ルーティンの作り方 にまとめてあります。
時刻を自分で並べるのが面倒なら、夜のルーティン作成ツール に就寝時刻と使える時間を入れると食事を終える時刻から消灯までの手順が時刻つきで並びます。無料で、ブラウザだけで動き、登録も要りません。
よくある質問
寝る前に食べると太りますか
夜にまとまった量の食事を取る食べ方では良くない結果が示されていますが、150kcal程度の少量については一貫した悪影響は示されていません。夜かどうかより1日の総量と習慣のほうが効きます。ただし、体重や血糖の管理で医師や管理栄養士から指示を受けている場合は、その指示を優先してください。
食べてすぐ横になるのは避けたほうがいいですか
胸やけや逆流が出やすい人では、避けておくほうが無難です。胃食道逆流症の患者147人と症状のない対照294人を比べた症例対照研究では、夕食から就寝までが3時間未満の人は、4時間以上の人に比べて胃食道逆流症のオッズ比が7.45(95%信頼区間 3.38〜16.4)でした。観察された関連であって、因果を示す設計ではありません。対象も夕食であって、この記事が扱う150kcal程度の軽食ではありません。逆流の心当たりがないなら、少量の軽食まで一律に避ける必要はありません。
空腹のまま寝てもいいですか
気にならない程度の空腹なら、そのまま寝て差し支えありません。この記事が扱っているのは空腹のせいで寝つけない場合です。眠れないほど気になるなら、我慢を続ける理由はありません。
夜中に空腹で目が覚めてしまいます
一度きりなら、上の表の「すでに布団の中」に沿って対応すれば足ります。週に何度も起きる、食べないと眠り直せない、という状態が続いている場合は、次の節を読んでください。
ダイエット中でも食べていいですか
1日の総量の中で調整するほうが続きます。夜だけ極端に抜くと翌日の反動につながりやすくなります。医療的な食事制限を受けている場合は、自己判断で変えないでください。
相談を考える目安
次に当てはまる場合は、この記事の範囲を超えます。医師や専門家に相談してください。
- 冷や汗、手の震え、動悸をともなう強い空腹がある。特に糖尿病の治療を受けている場合は、夜間の低血糖の可能性があります。症状の一覧は英国 NHS の低血糖のページ https://www.nhs.uk/conditions/low-blood-sugar-hypoglycaemia/ にまとまっています
- 体重が減っているのに食欲が強い、極端に喉が渇く、尿の回数が増えた
- 夜間の食べ方が続いていて生活に支障が出ている。夜間摂食症候群として提案されている基準では、夕食後に1日の摂取量の4分の1以上を食べる、または週2回以上、夜中に目を覚まして食べることを中心に据えたうえで本人がそれを自覚していること、苦痛や生活への支障があること、ほかの症状の項目が重なること、3か月以上続いていることを合わせて見ます。項目を数えて自己診断するためのものではないので、心当たりがあるなら相談してください
- 食べたい気持ちを自分で止められない、食べたあとに強い後悔がある
注意
この記事は一般的なガイダンスであり、医療上の助言ではありません。持病がある場合、妊娠中の場合、医師から食事の内容や時刻について指示を受けている場合は、その指示を優先してください。眠れない状態が数週間続く、日中の生活に支障が出ているといった場合は、自己判断で続けず、医師や睡眠の専門家に相談してください。
情報源
- Spiegel K ほか, Annals of Internal Medicine 2004 — 健康な若い男性における睡眠制限とレプチン・グレリン・空腹感の変化を調べた研究 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15583226/
- Kinsey AW, Ormsbee MJ, Nutrients 2015 — 夜間の食事が健康に与える影響を少量の場合と大きな食事の場合に分けて整理したレビュー — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25859885/
- St-Onge MP ほか, Advances in Nutrition 2016 — 食事の内容が睡眠の質に与える影響のレビュー。牛乳・脂の多い魚・タルトチェリージュース・キウイの研究を扱い、結果は予備的と評価 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27633109/
- Fujiwara Y ほか, American Journal of Gastroenterology 2005 — 夕食から就寝までの時間と胃食道逆流症の関連を調べた症例対照研究 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16393212/
- Allison KC ほか, International Journal of Eating Disorders 2010 — 夜間摂食症候群について提案された診断基準 — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19378289/
- American Diabetes Association, Hypoglycemia (Low Blood Glucose) — 低血糖の症状と対応の手順。吸収の速い糖質15gを取り、15分後に測り直す方法を案内 — https://diabetes.org/living-with-diabetes/hypoglycemia-low-blood-glucose/symptoms-treatment
- NHS, Low blood sugar (hypoglycaemia) — 低血糖の症状と対応 — https://www.nhs.uk/conditions/low-blood-sugar-hypoglycaemia/
- 文部科学省 食品成分データベース — 本文のエネルギーの目安に使用 — https://fooddb.mext.go.jp/
